最後の家族

2007年9月24日 読書
面白かった。

澄んだ寂寥のような読了感。
自分の趣味的にはそういったものが感じられるのが好きだ。

内容は引きこもりにも触れているけど
メインは家族の在り方について。

引きこもりの描写とかはさすがにかなりリアリティがある(気がする)。
NHKにようこそは元ひきこもりが書いてるからそっちのが確かは確かなんだろうけど
リアルと感じられるリアリティ、つまりはフィクションなんだけど
そういう所がしっかり書けているのはさすがに村上龍だとは思う。

家族って何かっていうのを表現するのは難しい。
生物的な産みの関係だけで示されるものでもないし
一緒に暮らしていく共同体という認識だって
子の成長とともに瓦解せざるを得ない。

血の繋がり、という漠然とした言葉が実は一番しっくりくるのかもしれない。

離れていても家族は家族なんだよね。
困っていたら無条件で助けてあげようと思えるような情が
自然に沸くのが家族なのかもしれない。

ただ、この本のテーマはそれの緩やかな否定だ。
あとがきで作者が誰かを救うことで自分を救われるという考えの否定から
この小説が出発していると述べるように
自立と依存は反する考え方だろう。

ただ、どこまでが自立でどこまでが依存なのか。

この小説では各人がしっかりとした自立をした形で終わる。
確かにハッピーエンドなのだが、
そこがどうしようもなく綺麗過ぎて物悲しい。

小説中に恋愛に関する場面があるが
それは淡々としたもので本質に触れない部分での恋愛だった。
相手がどうだから、どうするなんて事はない。

しっかりと自立をしている人間にとって
恋愛は余興のようなものなんだろう。

それがまだ恋愛中毒の毒素が抜け切れてない自分には痛い。

1人で生きていけるならなら恋愛なんて必要ない。
ああ、そうだ。その通りだ。

だけどどこまで進むんだろう? どこまで行くんだろう?

1人で進むことと2人で進むことの差異ってなんだろう?

そもそもなんで家族になるんだろう?

それには明確な答えなんてないだろう。
ただ、この小説は1つの答えを示してはいるのだが

それが模範解答すぎて綺麗過ぎて

ああ、どうしようもなく僕は悲しくなるんだ。

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